今回の記事は日本屈指の大型ダム、黒部ダムです。
黒部ダムのことはTVや映画「黒部の太陽」などを通じて知っていました。
生涯に一度は行ってみたいと思っていた場所に、念願がかなって行くことができました。
あいにく紅葉の季節ではなかったのが少し残念でしたが、壮大なダムの景観には大満足でした。
そんな黒部ダムの旅をレポートします。
出発点の扇沢駅
黒部に行く方法は「富山ルートと長野ルート」がありますが、今回は車中泊での旅なので長野ルートを選択。
夜10時に福島市を出発し会津を経由して新潟まで進み、北陸道の糸魚川で1泊目の車中泊。
糸魚川からは国道148号線を通って大町まで行き、そこから県道45号線で黒部まで走りました。
糸魚川から松本まで走る国道148号線は「千国街道」といって信州で最も代表的な街道です。
戦国時代には川中島の合戦で上杉謙信が敵の武田信玄に塩を送ったことでも有名で、古くから「塩の道」というそうです。
見どころがたくさんあった街道なのですが、夜中の移動だったことと天気が良くなかったことで
道中の景色をあまり楽しめなかったことは少し残念でした。。。
扇沢についた頃は昼を過ぎていましたが、駐車場の空きはたくさんありました。
駐車料金は第1第2駐車場が6時間以内なら1,000円、以降プラス1,000円
第3駐車場が24時間まで1,000円といった感じです。
電気バスのりば
扇沢駅からは、電気で走る「電気バス」に乗ります。
54年間親しまれてきた関電トンネルトロリーバスが2018年で運行を終了。
※トローリーバストは架線からの電気を動力に走る電車のようなバスです。
2019年新登場の電気バスは、トロリーバスと同様にCO2を排出しない環境に優しい乗り物で
架線がない場所でもどこでも自由に走れる「電気自動車(バス)」です。
全長5.4kmの関電トンネルを抜けて黒部ダム駅に向かいますが、これだけでもアトラクションのような感覚でした。
最新型の電気バスは音もなく静かに走ります。
破砕帯エリア
電気バスで走るトンネルの見どころのひとつがこのブルーのエリア。
黒部ダム建設工事で最も困難を極めた「大破砕帯」です。
破砕帯とは、岩盤の中で岩が細かく砕け、地下水を大量に溜め込んだ軟弱な地層のことです。
摂氏4度、最大毎秒660リットルの地下水が大量の土砂を含んで激しい勢いで噴出し
その勢いは作業員はもちろん、大型の機械や機材などをもろとも流しました。
当時の作業員はゴムガッパのような簡易的な装備で、寒さと闘いながら命がけで作業にあたっていたことを想うと
胸が熱くなる思いです。
そんな破砕帯は80m続き、それを突破するのに7か月の歳月が掛かったそうです。
電気バス黒部ダム駅
電気バスの乗車時間は約16分で、6.1㎞の距離を走ります。
料金は、大人片道1,800円=往復3,200円、小人片道900円=往復1,600円
あっという間に黒部ダム駅に到着しました。
この先は2種類のコースに分かれます。
階段の上りが苦手な人は、左に行ってそのまま黒部ダムまで進みましょう。
階段を60段下りて地下通路(下図赤丸)を抜けると黒部ダムです。
※黒部ダム公式サイトより引用
この地下通路を抜けると⑨レストハウス、⑪えん堤に直接行かれますので、階段の昇降が少ないコースです。
展望台まで220段の階段
ダムを上から眺めたい人は、頑張って階段を220段上ってください。
上の地図の④ダム展望台に行くことができます。
展望台から外階段を下りていけば、レストハウスやえん堤にも行かれますし
帰りは地下通路を通ってダム駅まで戻れば、ダムを1周するコースです。
展望台からの眺めで、ダムの大きさとV字峡谷の深さがよくわかります。
慌てず焦らず一段ずつゆっくり上りましょう。
破砕帯のおいしい湧水
北アルプスの美味しい天然水が豊富に溢れています。
手ですくって飲んでみましたが、とても冷たくて美味しい水でした。
力水をもらって再び歩きはじめます。
ダム展望台
ダム展望台に到着、立ち込める霧に標高の高さがうかがえます。
世界的にみても最大級のダムの大きさは圧巻です。
アーチ形のえん堤の長さは約500m!
外階段を下りてえん堤に向かいます。
見たことのないロケーションに驚きを隠せません!!
ダムの巨大さがわかります。
高さ186mで日本一深いダムからの放水量は毎秒10t以上。
舞い上がる水しぶきを感じるほどの距離で大迫力です。
黒部ダムえん堤
天気が良いと黒部ダム石碑の向こう側に立山連峰が望めますが、この日は一面に濃い霧がかかっていました。
当時の金額で513億円、現在の価値では2124億円の工費と、延べ1千万人もの作業員を導入して7年の歳月をかけて完成した黒部ダム。
黒部ダム展望台休憩所
ほんの70年前までは前人未踏の未開の地であった場所も、今では観光名所です。
黒部ダムには”ダムカレー”という名物があるのですが、この日はレストランがお休みでした。
仕方なく売店で腹ごしらえをしました。
日本一のダム工事
日本を代表するダムである「くろよん」こと黒部ダム。
観光スポットとして人気のダムですが、その工事は困難を極め、戦後最大級の大プロジェクトでした。
日本最大級の規模を誇るダム工事は、工事の記録でも人々を魅了します。
大型ミキサー車1.5台分の生コンが入るバケット。
27万台の大型コンクリートミキサー車が、3年掛けでコンクリートを運び打設しました。
多くの犠牲者を出した難工事
当時ダム工事の現場では『黒部にケガはない…』と言われていたそうです。
この言葉は、安全な現場であったことを意味するものではなく
事故=死を意味しています。
北アルプスに囲まれ標高約1268mのV字に切り立つ峡谷に、376万tものコンクリートを積み上げて、高さ186m、幅492mの巨大ダムを建設する工事は日本で類を見ない大工事でした。
ダムの本体工事は運搬路の確保からはじまり、解体した重機や資材など50kg以上の荷を背負った作業員が急斜面を下り、岸壁をくり抜いたわずか50㎝程の仮設の難路を16㎞も命がけで行き来して運びました。
※関西電力HPより引用
そんな作業員の命がけの工事で運搬路が完成し、ダム完成までに7年間の歳月と延べ1千万人の作業員が工事にあたりました。
尊きみはしらに捧ぐ
前代未聞の大工事には171名もの殉職者を出してしまったそうです。
このモニュメントの隣には殉職者全員の名前が刻まれた慰霊碑が建てられています。
世紀の大工事は『黒部の太陽』という映画やドラマになって後世に語り継がれていますので、興味のある方は是非観てみてください。